ゴムボートバッシング
〜 スローバッシングのススメ 〜




■はじめに

バス釣りには様々な楽しみ方があります。巨大なバスボートを駆ってトーナメントシーンを競う、競技としての楽しみ方。オカッパリやレンタルボートを利用し、気軽に自然と触れ合うアウトドアスポーツとしての楽しみ方。あくまでも大物のを追及し、記録魚のみを狙い続けるハンター的な楽しみ方。 等々、楽しみ方は色々で、年齢・プロ・アマ、初心者・上級者を問わず、皆さんそれぞれのスタイルで自分の釣りを楽しまれています。またそういった自由度の高さがバス釣りの人気の秘密だと思います。

では、これからご紹介しますゴムボート釣りの楽しみとは一体何でしょう? それは一言で言えば、誰にも邪魔されず、のんびりゆったりスローな釣りが楽しめる事だと思います。もし貴方が普段、釣り場の混雑に悩まされており、且つ釣果のみに囚われる事がないバサーなら、ゴムボートの釣りが案外お勧めかもしれません。ここではそんな貴方に私の楽しんでいるゴムボートによる釣りをご紹介したいと思います。





■ゴムボートの利点と欠点

ゴムボートにはその性質上、様々な欠点が存在します。言ってしまえば、釣果重視な方には向いてないと言えるでしょう。 しかし反面、それを補って余りある長所も存在します。ここでゴムボートの利点、欠点を幾つか挙げておきますので、ゴムボートの釣りを検討される方は、自らのフィッシングスタイルと照らし合わせて考えていただければと思います。



【利点】

◎リーズナブルである
必要最小限な設備のゴムボート(2人乗り+タックル、動力無し)なら、実質約3万円〜4万円と、ロッド一本購入するのと変わらない値段で購入する事ができます。 あるいはネットオークションや限定セール品を上手く利用すれば、もっと安く購入できる事でしょう。バスボートやアルミボートを購入するのは予算的にちょっと・・ でも船の釣りは楽しみたい、という方にはゴムボートがお勧めでしょう。 更に参考までに、もう少し本格的に電気動力を使った場合を考えてみると、一般的なアルミジョンボートセットとゴムボートセットの料金比較 (※何れも免許不要タイプ)ではこのようになります。



■10Fアルミジョンボートの場合 ■ゴムボートの場合


船体
バウデッキ
フロントデッキ
キャスティングシート
フットエレキ46ポンド
バッテリー
バッテリーチャージャー

18万円〜23万円




船体
ハンドエレキ36ポンド
バッテリー
バッテリーチャージャー
エレキマウント

8万円〜10万円



実際にはアルミボートの場合、上記装備以外にも車載用のボートキャリアが必要となりますので、コスト的な面においては、ゴムボートが如何に経済的かお解かりいただけるでしょう。



◎コンパクト且つ軽量である
最大の利点はこの点かもしれません。 上記想定のゴムボートなら、90cm×65cmのキャリーバックにすっぽりと収まり(オールは別)ますし、重量も25s程度。これなら乗用車のトランクやワンルームの押入れなどにも収納できますので、置き場所に困る事もありません。単独釣行の多い方や、アルミボートの置き場所に困る方には朗報でしょう。また、水際まで車で乗り着けられないタイプの湖や、スロープ自体が存在しない湖などでは、もはやゴムボートの独壇場と言えます。船体が軽い分、ちょっとしたスペースでもボートの昇降が可能になるのです。



       



◎バリエーションが豊かである
ゴムボートはメーカーによって様々なタイプが売られており、人員・予算・フィッシングスタイルによって、好みの一艇を選ぶ事が可能です。動力の有無(エンジン・エレキ)、素材の種類、デザイン、色、オプションパーツ等に拘ってみるのも面白いでしょう。更に後ほどご紹介しますが、中には独自の改造を施し、よりオリジナルなゴムボートを作ってしまわれる方もおられます。創意工夫によりゴムボートの欠点を補うような改造を施し、より快適な船体を作り上げるのも、ゴムボート釣りの大きな楽しみの一つです。


(ario氏作ロッドホルダー)



◎安全である
もし破裂したらどうするの? 良く聞かれる事ですが、ゴムボートは案外安全な乗り物です。大抵のボートは2気室になっていて、もし一箇所に穴が空いたとしても決して沈する事はありませんし、素材自体も少々の事では破れにくく出来ています。浮力もかなりのもので、2人乗船+タックル満載でも全く不安感はありません。一旦進水したら沈を待つしかないアルミボートや、へたに猛スピードが出てしまうバスボートよりもむしろ安全な乗り物なのでは? と思ってしまうのは貧乏人のひいき目だけでは無い筈です。



◎免許が不要である
もともと手漕ぎゴムボートには何の免許も必要ありませんが、平成15年12月の規制緩和により、3m未満、かつ動力が1.5kW未満の船舶にも免許が不要となりました。つまり、ゴムボートにエレキモーターを取り付けるのも免許がいらなくなったという事です。船舶免許や船体検査が必要なアルミボートやバスボートと違って、これにより誰にでも手軽に金をかけず機動力のある釣りが楽しめるようになりました。
↓新しい免許制度についての詳細(国土交通省)
ttp://www.mlit.go.jp/kaiji/menkyo/gaiyou/gaiyou.html



◎乗り心地が良い
乗り心地のよさも忘れてはいけません。湖上の風に吹かれながら、ゆらゆらと波に身を任せる至福のひと時は、なにものにも代えがたい魅力があります。真夏の昼下がり、ひんやりとした流れ込みの木陰で釣りをしていたら、知らぬ間に寝てしまっていた。なんて事も、ゴムボートならではでしょう。 シートを外し、よいしょっと船底に横になれば、ゴムボートはあっという間に水上ウォーターベッドへと変身するのです。



◎自然との一体感が味わえる
個人的にはこの点がゴムボートの最大の利点のように思われます。エンジン船と違って何時にもスロー&ローパワーなゴムボートでは、釣行中や移動中にも鳥のさえずりや木々の色づきに自然と目がいくようになります。貸切の山上湖で燃えるような紅葉に包まれながら船上ですするホットコーヒー・・ なんて贅沢な瞬間でしょう。

  



◎好きな時に乗れる
ゴムボート釣行では時間を気にする必要がありません。レンタルボートのように出船時間や帰着時間を気にする必要がありませんので、朝寝坊も自由ですし、夕まずめのこれからという時に帰着時間の心配をする事もなくなります。更には冬場、レンタルボート店が休業し貸しスロープが閉じてしまう時期にもエントリーする事が可能です。誰もいない無人の湖上で傷一つ無い厳冬期のバスを狙ってみるの一興です。





【欠点】

×波・風に弱い
これはもうゴムボートの宿命だと思って諦めるよりほか無いでしょう。船体にスタビライザーを取り付けたり、アンカーを投入したりする対処策も、強風の前には万全ではありません。あっというまに流されてしまいます。むしろ、強風時には釣りを諦めるくらいの気持ちが無ければ、ゴムボートの釣りは出来ないのかもしれません。



×巻物系が苦手
ゴムボートは特性上、巻物系の釣りを苦手とします。持ち前の軽量・高浮力が仇となって、ルアーの引き抵抗によりボートが引っ張られてしまうのです。その為、クランクベイト・スピナーベート・ビックベイト等のサーチ系ハードルアーを使う機会は極端に少なくなってしまいます。ですので、これらのハードルアーを操るテンポの速い釣りを好まれる方には、ゴムボートの釣りはあまりお勧めで出来ないでしょう。



×機動力に乏しい
ランガンのように機動力を必要とする釣りもゴムボートは得意としません。一般的にゴムボートの釣りは手漕ぎがエレキモーターの使用が主となりますので、アルミボートやバスボートのように派手にガゾリンを焚いて次から次へとポイントを回るような機動力はゴムボートにはありません。ゴムボートはまったり、うっとりが基本です。



×フットエレキが使えない
バスボートやアルミボートに比べて最もハンディーとなるのはこの点ではないでしょうか?中には独自の改造を施しフットエレキを取り付けてしまう猛者もおられますが、普通フットは無いのが一般的です。ですので、キャストしながら岸際を流してゆくスタイルや、流れや風の中で一箇所にステイしながら狙うスタイル、微妙なボートコントロールが必要なサイトフィッシング等は特に苦手とします。こういった点においても釣果重視な方にはゴムボートの釣りは向かないでしょう。



×準備・片付けが大変
オカッパリやレンタルボートに比べてという事ですが、ゴムボートの準備・片付けにはかなりの労を強いられます。手漕ぎの場合はそうでもありませんが、エレキモーター使用ともなると一気に運搬物が増えてしまい、ボート本体、オール、エレキ、バッテリー、タックル、アンカー、ポンプ、これだけの物を水際まで運ばなければならなくなります。勿論、行きも帰りもです。あまり体力に自信の無い方や、一人での釣行がメインの方、ホームレイクで水際までの距離が遠い場合等は、購入前にこの点を十分に検討された方が良いでしょう。実際、ゴムボートは買ったものの、体力との折り合いが付かず途中で止めてしまった。という方もいらっしゃいます・・。





×穴が開く
利点で案外安全といっておきながら矛盾するようですが、やはりゴムボートに穴開きは付き物です。特に出船時や帰着時に底をすって船底に穴を開けるというパターンが多いようです。緊急時の対処法やパンク修理法は十分知っておく必要があるでしょう。





×狭い
一人乗船だとそうでもありませんが、二人も乗ってしまうともう大変です。ただでさえ狭い船内は二人分のロッド、タックルケース、雨具、弁当、アンカー、バッテリー等に埋め尽くされ、足の踏み場も無い状態となってしまいます。落ち着いて釣りに集中する為にもロッドホルダーの設置等、船内を如何に広く使うかがポイントになるでしょう。




×車が臭くなる
乗用車と違いワンボックス車の場合、荷室と搭乗席が仕切られていない分、どうしても車内に水垢臭・ゴム臭が充満してしまいます。いくら撤収時に良く荒い乾かしたとしても、どこかしらに水分・泥汚れが残っているもので、それが悪臭の元となってしまうのです。対策としては、衣装ケースに収納する・消臭剤・芳香剤を用いる等ありますが、何より積みっ放しにしないというのが一番の対策かもしれません。




いかがでしたか?私がゴムボート釣行をするにあたって、普段感じている利点・欠点を挙げてみましたが、大体のイメージはお分かりいただけたでしょうか?次ページからは更に具体的に購入を検討される(された)方を対象としてパンク修理法、安全対策、装備品選びのポイント等をご紹介してゆきたいと思います。




-next page- (基本編Uへ)
- menu-